【排便のトラブル】第5回:便失禁の診断と対処法 [痔・おしりのトラブル] All About
便失禁の診断と対処法
▼今回は「便失禁の診断と対処法」について詳しくお聞きしていきたいと思います。よろしくお願いします。 味村(みむら)俊樹先生(以下、味村:)便失禁の治療法には「保存的療法」と「外科的療法」がありますが、基本的には、身体への負担が少ない低侵襲の保存的療法から始めて、効果がなければ次のステップに進む、という段階的な治療法をとります。
診断と治療の流れを示したものが、以下の表です。順を追ってご説明しましょう。
■便失禁患者診療のアルゴリズム
味村:診断は「便秘」の場合と同じように、問診によって便失禁の状態、患者さんが困っている症状、併存症(他にかかっている病気)、既往症(これまでにかかった病気)、薬の服用状況、分娩歴や手術歴などに関して詳しくお聞きします。
また、「スコアリングシート」も使用し、QOL(生活の質)への影響を点数化することで、便失禁が日常生活に与えている影響を評価します。加えて、身体診察では、肛門の締り具合なども評価します。
大腸癌やIBD(炎症性腸疾患)などの器質的な疾患や、直腸脱など手術が必要な状態と判断される場合を除き、便失禁の患者さんには、まず保存的な治療として食事・生活・排便習慣指導と薬物療法を行います。
副腎疾患の治療
保存的療法
▼「便秘」治療も基本には食事・生活・排便習慣指導と薬物療法がありましたね。(第3回参照)
「便失禁」の場合は、どのような指導・治療でしょうか?
味村:便秘、特に排便回数減少型の場合は、排便回数を増やすとともに便を軟らかくする指導・治療でしたが、便失禁の場合は漏れにくくするために、便秘症状で困らない範囲で排便回数を減らすとともに便を硬くする・固形化することに主眼を置いた指導・治療になります。
具体的には、次の二つの治療を行います。
■食事・生活・排便習慣指導
貧血、テスト
- 繊維質の多い食事の摂取
食物繊維を多く含んだ食品の摂取量を増やしたり、食物繊維加工食品を摂取するように指導します。
便が緩いと漏れる頻度や程度が高まるので、便を固形化してS状結腸にとどまりやすくすることによって、便失禁が改善するのです。 - アルコール摂取制限
アルコール飲料、特にビールなど水分の大量摂取を伴う飲酒は便を緩くしますので、控えるように指導します。ただし、なかなか守れない患者さんも多いですね。 - コーヒー摂取制限
カフェインには腸管の蠕動(ぜんどう)運動を促進する作用があり、切迫性便失禁の原因となるケースもあるので、摂取量やタイミングに制限を設ける指導を行います。 - 排便習慣指導
脊髄障害患者やご高齢の方で、直腸に便があっても便意を感じない患者さんには、定期的にトイレに行って排便を試みる習慣をつけていただきます。
■薬物療法
▼そして、食事・生活・排便習慣の指導に加えて、薬物による治療を行うわけですね。
味村:はい。まずは、ポリカルボフィルカルシウムなど便の硬さを調整する薬を処方します。過敏性腸症候群の治療薬でもあるポリカルボフィルカルシウムは、水分を吸収してくれるので、繊維質の多い食事摂取と同じような効果があります。
ポリカルボフィルカルシウムで十分な効果がなければ、次に、下痢止めの作用があるロペラミド塩酸塩の薬を処方します。これは便を硬くする効果が強く、飲み過ぎると便秘になるので、患者さんの症状に合わせて飲む量を調整することが大切です。頻便、軟便の状態が続き、便が漏れる方には効果的な治療法です。
しかし、こうした便を固形化する保存的療法で症状に改善が見られない場合は、その原因をしっかり突き止めて対処す� ��必要があります。
次のステップは、専門施設での検査と対処法です>>
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