「緩和ケアチーム」で取り組むがんの疼痛治療:痛み緩和;がんサポート情報センター
監修:片柳憲雄 新潟市民病院地域医療部長・消化器外科部長・緩和ケアチーム顧問
野本優二 新潟市民病院総合診療内科医長・緩和ケアチーム長
取材・文:柄川昭彦
(2011年04月号)
チームのメンバーが病院内を回診する
火曜日の午後2時、新潟市民病院の小さなカンファレンスルームに、緩和ケアチームのメンバーが集合した。すぐに回診前の検討会が始まる。電子カルテのデータが表示され、これから回診する患者さんについて、緩和ケアチーム長を中心に、治療方針などが検討されていく。
チームが関わるのは、緩和ケアが必要であるとして、主治医から依頼があった患者さんだ。現在、同病院では、がんの痛みがある患者さんに対しては、緩和ケアチームが関わるまでもなく、オピオイド(医療用麻薬)などを使用した疼痛治療が行われている。緩和ケアチームに依頼されるのは、そうした通常の治療を行っても、まだ症状が残るような難しいケースが多い。
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検討会が終了すると、メンバーは病棟に上がっていく。まず、ナースステーションで、担当の看護師から患者さんの状況を聞き、それから病室に向かう。こうして、緩和ケアチームのメンバーが、痛みなどつらい症状を抱えた患者さんのもとをおとずれる。患者さんにとっては、苦痛を取り除いてくれる頼もしい存在であるに違いない。
緩和ケアチームは、身体症状を診る外科医師、内科医師、精神科医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士、メディカルソーシャルワーカーで構成されている。患者さんの症状や状態によって、それぞれのメンバーが専門性を発揮してケアに取り組むのだ。
中心となるのは疼痛治療だが、使用する薬が増えれば副作用対策が複雑になるし、不安やせん妄もうなどの症状を伴う患者さんには、精神科の薬が必要になる場合もある。困難な症例ほど対策が多方面にわたるので、チームでないと対処しきれないのだ。
1回の回診で診る患者数は、7〜8人のことが多い。これによって、同病院の困難な苦痛を抱えた患者さんに対するケアは、ほぼ行えているという。
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予定の回診を終えると、チームのメンバーはそれぞれの職場へと戻っていく。緩和ケアに取り組んでいるとき以外は、別々の職場で仕事をしているのだ。
緩和ケアを必要とする人が常時20〜30人存在した
緩和ケアチーム顧問の片柳憲雄さんは、消化器外科部長でもある。緩和ケアに関わるようになったのは97年のことだ。病院内に緩和ケアの勉強会ができ、それに加わったのが最初だった。
「食道を専門にしていたのですが、食道がんは手術しても半分くらいが再発します。中には痛みに苦しめられながら亡くなっていく人もいて、何とかしたいと思っていました。消化器内科を中心にした勉強会でしたが、加えてもらいました」
1年後、勉強会の中心人物が他の病院に移り、会を任されることになった。そこで、ただ勉強するだけでなく、緩和ケアを現場に生かそうということで、まず病院全体でアンケート調査を行った。緩和ケアを必要とする患者さんが、どのくらいいるかを調べたのだ。わかったのは、常時20〜30人の患者さんが、強い痛みなどに苦しめられているという実態だった。
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「放っておけませんでした。すぐに緩和ケアチームを作り、隔週でもいいから患者さんのところに行ってあげよう、ということで活動を始めました」
そのころは、隔週で集まるのがやっとだった。しかし、間隔が2週間あくので、次に行ったときには、患者さんがすでに亡くなっていることがよくあった。
「緩和ケアというと、終末期の医療と誤解があったので、最後になって私たちが呼ばれるケースが多かったのです。これではだめだということで、週1回の回診にしました」
その後、総合診療内科医の野本優二さんが加わり、それまで片柳さんが務めてきた緩和ケアチーム長を引き継ぐことになった。
「野本君がきて、週2回体制が可能になり、チームとしてできることが広がりました。ただ、昔はオピオイドを使えば楽になる患者さんが中心でしたが、今はそうした治療をしても問題がある患者さんばかり。より高度なケアが求められています」
ニーズの多様化に合わせ、いろいろな職種のメンバーを集めていったが、それでもときには手におえないケースがある。そんなときのために、麻酔科を始めいくつかの診療科の医師に、協力医師になってもらった。必要に応じて硬膜外ブロックなど、専門的な治療を依頼するためだ。また、各病棟に協力看護師を決めてもらい、チームの看護師と連携してケアできる体制も整えてきた。
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