第5回 背部痛の放置に注意
現代人によく見られる病気や症状に「腰痛」があります。 成人の8割以上の人が、少なくとも1度は激しい腰痛を体験しています。 また、歩くことが減って筋力が低下している、コンピュータで仕事をして一日の大半を座っているなどの理由から、首・肩のコリや痛み、背中のダルさや痛み、そして腰痛などが増えています。 こういった慢性的な症状は、「我慢出来ない程ではない」などの理由で放置されているケースが多いのです。 しかし、それが重大な問題へと発展するリスクが高いことが判りました。 今回は、「背部痛」の放置が如何に危険なことかを紹介致します。 |
慢性の背部痛が脳を萎縮
2004年11月に神経科学ジャーナルという医学誌に発表された研究報告によると、「慢性の背部痛が脳を萎縮させる可能性がある」ということです。
研究によると健常者における老化による脳の萎縮が年間0.5%であるのに対して、慢性背部痛患者の場合は5〜11%も萎縮し、この慢性背部痛による甚大な脳の灰白質の萎縮は10〜20年の老化に相当するというものでした。 これは背部からの痛みの信号を慢性的に脳が受け続けることで脳に悪影響があり、結果として脳の一部が萎縮し、老化が10〜20倍早く進むということです。 我慢出来ない程の痛みではないから、又は、仕事が忙しいから、などの理由で首・肩・背・腰といった背部にある痛みを放置すれば、とんでもない結果が待っている可能性があるのです。
最近では若年性アルツハイマー型認知症が注目されていますが、アルツハイマーでは脳が萎縮することが確認されています。 今回の研究では、アルツハイマーに見られる脳の萎縮と同じように、慢性的な背部痛の患者にも脳の萎縮が起こることを報告しています。 放置すれば背部痛だけでなく認知症も早期に発症するリスクが増すのです。
また、オランダ国立公衆衛生環境研究所のGelder博士らが2004年に神経学という医学誌で発表した研究では、「高齢者が身体を活動的に保つことは脳活動も適正に保たれる事、運動の継続によって加齢による認知機能低下を抑える効果があるようだ」としています。
散歩、サイクリング、スポーツ、庭いじり、農作物栽培、その他の趣味などの身体を動かす活動の期間と程度に関する認知機能を測定した研究の結果、調査開始10年後に運動レベルが低下した男性では、同程度の運動レベルを調査中維持した男性と比較して、認知機能が3.6倍も多く低下したことが判りました。
もし背部に痛みがあれば、筋骨格系に直接関与しますから生活習慣、特に運動に影響します。 運動に支障が生じると、生活の質が低下してしまいます。 そして、背部痛などがあり運動レベルが低下すると、認知機能などの脳活動も低下するのです。
大阪大学医学部の中西範幸博士らが日本人男性約2,500人を対象に7年間研究して2005年1月に発表した研究結果は、「普段からほんの少し多く動くことが、実際に血圧に有効な可能性がある」というものでした。
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